タイトル:「春の終わりと桜の花びら」
作者:須藤水波(a sea route)

×禁止×
自作発言

○許可○
サンプルボイスへの使用、アドリブ 等(禁止事項以外ならOKです)

△任意△
使用報告
(twitter:@sudou_kikaku/sudoumizuha.r※gmail.com ※→@)

http://asearoute.web.fc2.com/ss/harunosakura.htm

登場人物:

ヒロイン…………サヤカ(s)69  おてんば、明るい
ヒーロー…………ヒロキ(h)50  ミステリアス、おとなしめ
ヒーロー・ヒロインの共通の友人…ダイチ(d)23 普通、表裏有り
all 142台詞

(M)……モノローグ
()……心の声
『』……回想

地の文はト書きなので読まないでください。
*全体の長さは10分〜15分程度です。

----------------------------------
ファイル名 キャラ名 台詞
000_s サヤカ 「(M)桜の妖精。そんなものがこの世に存在するかは知らない。
でも、桜の妖精のような、不確かな気持ちは、私の心の中にあることは間違いなかった。

(タイトルコール)春の終わりと桜の花びら」
【se】
校内ガヤ
ドア開
001_s サヤカ 「えーと……」
サヤカ、ダイチを探してきょろきょろ。
ヒロキと話すダイチを見つける。
002_s サヤカ 「(あっ、ダイチ……、ヒロキくんと話してる……でも呼ばないとだし)」
003_s サヤカ 「ねえ、ダイチ!」(少し遠くから呼ぶように)
004_d ダイチ 「ん? ああ、サヤカ」
005_s サヤカ 「ちょっといい?」
006_d ダイチ 「おお。ヒロキ、ちょっと行ってくる」
007_h ヒロキ 「……ああ」
【se】
足音(数歩)
008_d ダイチ 「お待たせ。何?」
009_s サヤカ 「あのさ、朝から悪いんだけど、教科書かしてくれない?」
010_d ダイチ 「またかよ? ったく、今日は何の教科だ?」
011_s サヤカ 「日本史、お願いしますっ」
012_d ダイチ 「いいけど……、たまには別の人からかりればいいじゃねえか」
013_s サヤカ 「別の人って?」
014_d ダイチ 「ヒロキとか」
2人、ヒロキを見る。
ヒロキは窓の外を見ているので気付いていない。
015_s サヤカ 「あー、ヒロキくん……。うん、知ってるよ、でもさ
016_d ダイチ 「なんだよ」
017_s サヤカ 「友達に言われたんだ、ヒロキくんとは話さない方がいいって」
018_d ダイチ 「なんで」
019_s サヤカ 「ほら、いつも手首に包帯巻いてるし、授業にはまずいないし。
不良だって噂になってて、危ないからって」
020_d ダイチ 「なるほどなあ。じゃあ教科書持ってくるけど、俺、3限日本史なんだからすぐ返せよ!」
021_s サヤカ 「はーい」
022_d ダイチ 「あとついでに教科書返してくるとき野暮用頼む」
023_s サヤカ 「もう、しかたないなあ。了解!」
【se】
校内ガヤFO

**場面転換**

【se】
袋を地面に置く音
024_s サヤカ 「これで全部、っと……、ゴミ捨て重いから嫌なんだけどなあ」
【se】
足音(グラウンド)
025_s サヤカ 「あ、桜が少し散っちゃってる。もう4月終わっちゃうのかあ……ん?」
放課後、サヤカはゴミ捨て場から帰るときに、学校で一番大きな桜の木の近くを通りかかった。
そのときに、見たのだ。
ヒロキが、物憂げな表情で、桜の木の――……根元を見ているのを。
026_s サヤカ 「(えっ? あれってヒロキくん……だよね……、なんで桜の木なんか
見てるんだろ……)」
そうは思いながら、遠くからこっそり様子を見つめるサヤカ。
027_s サヤカ 「(もしかして、ヒロキくんも桜の木が散っちゃうの、寂しいとか思ってるのかな?)」
そう思っていると、ヒロキがしゃがみこんだ。
028_s サヤカ 「(あっ、ヒロキくんがしゃがみこんだ……、木の根元をさわって何してるんだろ……
ハッ、まさか!)
029_s サヤカ 「(M)実は、私は夢を見ていた。その夢というのが、ヒロキくんによく似た
男の人が一言だけ言う夢」
030_s サヤカ 『実は桜の妖精を探している』(ヒロキの真似はしなくていい)
031_h ヒロキ 『実は桜の妖精を探している』
※030、031 同時
032_s サヤカ 「まさかヒロキくんがそんなファンシーなこと言うわけないと思って、
だって不良だよ?」 ※つい口にだしてひとりごとをいう
033_h ヒロキ 「おい」
034_s サヤカ 「もし本当に桜の妖精を探しているんだとしたら不良とか
そういうのは見せかけで本当は超いい奴だと思うんだよね〜!
噂って一人歩きするっていうしさ、それにいつもヒロキくんは窓の外を」
035_h ヒロキ 「おい」
036_s サヤカ 「って、ひゃあ!!」
037_h ヒロキ 「……うるさい」
038_s サヤカ 「あ、ひ、ヒロキくん!? い、いつからそこに!」
039_h ヒロキ 「こっちの台詞なんだけど。……俺が不良だって?」
040_s サヤカ 「悪く言えば不良で、よく言えばミステリアスだよ!
気付いたら教室にいないし、かといって成績が悪いわけでもないし」
041_h ヒロキ 「……家で勉強してるから」
042_s サヤカ 「(ほら、やっぱり超いい奴なんじゃん!?)」
043_h ヒロキ 「でも、君が……サヤカが思ってるような人じゃないよ」
044_s サヤカ 「え……、な、なんで?」
045_h ヒロキ 「サヤカには関係ないから」
046_s サヤカ 「もう、そうやって人を遠ざけるから悪い噂が出ちゃうんだよ!」
047_h ヒロキ 「別にそれで構わない。目的が果たせれば」
048_s サヤカ 「目的って?」
049_h ヒロキ 「……実は、桜の妖精を探している」
050_s サヤカ 「…………なんて?」
051_h ヒロキ 「桜の妖精」
052_s サヤカ 「(あれ、待って、まさかこれって、正夢?)」
053_s サヤカ 「なんで桜の妖精を探しているの?」
054_h ヒロキ 「夢で見たから。桜の妖精」
055_s サヤカ 「それだけで探してるの?」
056_h ヒロキ 「うん」
サヤカは、なんだかおかしくなってきて吹き出してしまう。
大柄な男が、桜の妖精―どんな姿をしているかは知らないが―を夢で見たからそれを探している、というのだ。
自分よりもかわいい、そう思った。
057_s サヤカ 「ぷっ……、あっはは!」
058_h ヒロキ 「やっぱり、信じてくれないか」
059_s サヤカ 「ううん、信じるよ! 信じるけど、唐突すぎて……ふふっ」
060_h ヒロキ 「じゃあなんで笑うんだ」
061_s サヤカ 「かわいいなあって思って。ヒロキくん、不良なんかじゃないじゃんね!」
062_h ヒロキ 「……、ありがとう」(少し照れる)
063_s サヤカ 「みんなに訂正しておかなきゃ。ヒロキくん、かわいいよって」
064_h ヒロキ 「それは困る……」
065_s サヤカ 「困るの? う〜ん、でも私だけ知ってるっていうのも……、ああ、でもいいかも。
私だけ知ってるってやつ」
066_s サヤカ 「なんか、共有の秘密っていいよね!」(無邪気)
067_h ヒロキ 「……うん」
【se】
携帯着信音
068_s サヤカ 「わっとと、はいはいっ……あ、ダイチからメールだ。
今は、裏庭の桜の木のところにいるよっと」  (今は〜打ちながら返信)
069_h ヒロキ 「教室、帰った方がいいんじゃない。ダイチ、待ってるよ」
070_s サヤカ 「ダイチが? なんで?」
071_h ヒロキ 「……教室に帰ったら分かると思うけど」
072_s サヤカ 「でもさっきメール返したから、今頃こっち向かってるんじゃないかなあ」
073_h ヒロキ 「……そう」
074_s サヤカ 「ね、それよりヒロキくん! あっちの桜の―……」
サヤカは違う桜の木のことをたずねようとして、体の向きを変えた。
が、足が自然とすべってしまい、後ろに倒れるような姿勢になる。
075_s サヤカ 「ひゃっ……!」
076_h ヒロキ 「っ、サヤカ!」(珍しく声をはる)
【se】
地面に倒れこむ音
077_s サヤカ 「いったあ……」
078_h ヒロキ 「間に合わなくて、ごめん……」(顔近い)
079_s サヤカ 「ううん、それは……、え?」
080_s サヤカ 「(え、え、えええええ!! ひ、ヒロキくんの顔がこんなに近くっ……!)」
気付いたら、地面ドンされていた。
顔が近い。
081_h ヒロキ 「前から思ってたけど、サヤカって結構鈍感……ん?」
ヒロキは、サヤカの後に気付いた。
082_h ヒロキ 「あ、ご、ごめん、すぐどくから」
083_s サヤカ 「へっ!? あ、う、うんっ……」
【se】
足音(数歩)
084_d ダイチ 「サヤカ」
085_s サヤカ 「え!」
086_h ヒロキ 「ダイチ……」
起き上がる前の、ヒロキがサヤカに覆いかぶさったところをダイチに見られた二人。
087_d ダイチ 「ヒロキ、お前」
【se】
足音
二人、起き上がる。
088_h ヒロキ 「……サヤカが転びそうになったから、助けようとして」
089_d ダイチ 「お前、俺の……俺がサヤカを好きっての知っててそういうこと」
090_s サヤカ 「はい!?」
091_h ヒロキ 「だから教室戻ればって言ったんだ……」
092_s サヤカ 「え? え? 待って、私わかんない」
093_d ダイチ 「横からかっさらおうとしてたのか?」
094_h ヒロキ 「そんなつもりない」
095_d ダイチ 「じゃあなんのつもりだったんだ?
こんなこと言いたくないけど、お前の友達やめるぞ」
096_h ヒロキ 「!」
097_d ダイチ 「ヒロキ、お前、学校でどう言われてるか知ってるか?
お前に関わると、ろくなことがないってんで、貧乏神扱いされてるんだぜ。
そんな奴と友達になってやってる俺に喧嘩を売るってのか?」
098_h ヒロキ 「……ダイチは、そう思ってたんだ」
099_s サヤカ 「うそだよ」
100_d ダイチ 「サヤカ?」
101_s サヤカ 「ダイチはそんな人じゃないもん。友達になってやってるとか、うそでしょ?」
102_d ダイチ 「嘘じゃねえよ。誰にでも優しいってみんなが言うから、ヒロキにも
優しくしてたんだ。 サヤカなら、ヒロキと友達にさせてもいいかなって思って、
今朝話ふってみたけど、 まさかこうなるとはね」
103_h ヒロキ 「……待てよ。じゃあ、サヤカのこと、好きって言うのは」
104_d ダイチ 「嘘じゃないぜ? 扱いやすくて、パシリにもできるいいカモだからな」
105_s サヤカ 「(パシリ? じゃあ、今まで仲良くしてくれてたのは―……)」
【se】
ビンタ
サヤカがそう思っていた時、肌を叩く音が響いた。
ヒロキがダイチの頬を叩いた音だった。
106_d ダイチ 「いってえ……てめえ!」
107_h ヒロキ 「たとえ、それが本心だとしても今言うことじゃないだろ!」
108_d ダイチ 「あれあれえ? もしかして、ヒロキはサヤカが好きなのか?」
109_h ヒロキ 「っ……関係ないだろ!」
ヒロキ、ダイチにつかみかかろうとする。
110_s サヤカ 「あ、ちょっ、ヒロキくん! もういいから!」
111_h ヒロキ 「でも、こいつ」
112_s サヤカ 「お願い、ヒロキくんの手、痛そうだもん」
113_h ヒロキ 「……」
114_d ダイチ 「チッ」
115_h ヒロキ 「ダイチ、どこに行くんだ!」
116_s サヤカ 「ヒロキくん、いいから!」
117_d ダイチ 「やっぱ、ヒロキと関わるとろくなことねーわ」
【se】
足音
ダイチ、その台詞を吐き捨ててその場を去る。
118_s サヤカ 「ダイチ、行っちゃった……。ねえ、ヒロキくん、あの……なんで?」
119_h ヒロキ 「何が」
120_s サヤカ 「だって、体力なさそうなのにつかみかかるとか……」
121_h ヒロキ 「腹立ったから。……ダイチ、俺に”サヤカが好き”って言ったとき、本気の目してたから、
信じてたのに、嘘だったから」
122_s サヤカ 「かばってくれたんだ、ありがとう」
123_h ヒロキ 「……そんなんじゃない。ただ……夢の中で見た、桜の妖精ってやつが、
サヤカに似てたから……守らなきゃって」
124_s サヤカ 「私が桜の妖精? そんなわけないよ〜」
125_h ヒロキ 「入学式のとき、サヤカ、ダイチたちと桜の木の下で写真撮ってただろ?
俺、遠くから見てたんだけど、サヤカだけ光って見えて」
126_h ヒロキ 「今まで、時々夢に見てたんだ。目が覚めたら顔は覚えてないけど、桜の妖精が、
サヤカみたいな雰囲気ってことは覚えてて」
127_s サヤカ 「ねえ、その桜の妖精ってさ、結局のところなんなのかな?」
128_h ヒロキ 「俺自身、よく分からない。でも桜の妖精を探せば……いいことがあると思ったんだ」
129_s サヤカ 「いいこと?」
130_h ヒロキ 「遠くから見てるだけだったサヤカとこうして話せること、とか」(イケメンぶわわぁ)
131_s サヤカ 「……ヒロキくん、は、今まで通り、誰とも……じゃなかった、私以外と話しちゃだめ」
132_h ヒロキ 「え?」
133_s サヤカ 「ヒロキくんのいいところは私が知ってるから、それでいいことにするの!」
134_h ヒロキ 「……そっか」
135_s サヤカ 「実は、夢で見てたんだ。桜の妖精を探すヒロキくん」
136_h ヒロキ 「俺を?」
137_s サヤカ 「そ! 桜の妖精って、赤い糸みたいなやつなのかも」
138_h ヒロキ 「それって、俺とサヤカが」
139_s サヤカ 「この話はおしまい! ……とりあえずかえろ、ヒロキくん。
怪我した手、手当てするよ」 (この話はおしまい! はあわてて)
140_h ヒロキ 「……分かった」
二人、一緒に歩き出す。
141_s サヤカ 「(M)春の終わり、桜の花びらが散るころ。たぶん、桜の妖精は、桜の花びらのことだった。桜の花びらは、新しい出会いを鮮やかに彩ってくれた。」